2014年から小林は期待をされて優先的に起用され,一時期は正捕手の座を射止めるかという立場に立ちました。しかし,ジャイアンツは,2017年のドラフトでは岸田・大城と捕手を獲得し,今年は炭谷をFAで獲得しました。小林を不動の正捕手とは考えていないということかと思います。その一番の原因は,あまりにも非力な打撃にあります。小林の2018年のDenfence価値は11.7という大幅なプラスを計上しています。しかし,総合的な価値であるWARは0.0です。これはBattingが-17.7と大きく足をひっぱっているからです。

 小林の非力な打撃の一方,新人の大城はBattingで-2.4と小林と比較して大幅なプラスを生み出し,WARでは,0.6とジャイアンツの捕手の中では一番の価値を生み出しました。来季に向けてこの二人のバッティングを振り返っておきたいと思います。

小林と大城の打撃比較1
氏名
PA
AVG
OBP
SLG
OPS
ISO
BB%
KK%
BAPIP
小林誠司
313
.219
.300
.275
.575
.0578.6
18.5
.272
大城卓三
202
.265
.320
.395
.715
.130
7.4
22.8
.333
小林と大城の打撃比較2
氏名
SOFT%
MID%
HARD%
O-Swing%
Z-Swing%
O-Contact%
Z-Contact%
小林誠司
27.2
46.5
26.2
35.6
59.4
67.2
90.8
大城卓三
18.0
43.2
38.8
31.8
68.4
71.4
83.9

 小林は新人の大城に打撃成績が負けています。大城はOPS.715を記録しましたが,小林は捕手としても物足りない.575に留まっています。打率ももちろんですが,長打率も小林は大城に劣っており,それは,ISOにも表れています。ただ,BB%,KK%に大きな違いはなく,この点では二人は互角です。

 大城はBAPIPが.300を超えているので,2018年は出来過ぎであった可能性があります。2019年は打撃をパワーアップさせないと成績が落ちる可能性が高いです。ただ,小林との比較では,BAPIPが小林よりも高くなることに納得がいきます。小林は打球の速度が遅いです。大城が打球速度が速いことを表すHARD%で38.8を記録しているのに対して,小林は26.2しかありません。他方,打球速度が遅いことを表すSOFT%が小林は27.2,大城が18.0となっており,大城と小林の打球の質には差があります。この差が埋まらなければ,大城が小林よりも打撃で上を行くのは当然ということかと思います。

 普通,ストライクのコンタクト率であるZ-Contact%が高いのは良いことだと思います。小林は90.8で長野の90.6に匹敵します。しかし,小林の打球速度を考えると,小林にとってはこれがあまり良いことではないのではないかと思えてきます。当てることに意識が払われすぎて,スイングのスピードを犠牲にしているのではないかと思えるからです。実際,今年の小林の打席では,打った瞬間には,「芯で捉えた!抜ける!」と感じたにも関わらず,内野手が悠々と追いつくという場面を多く見ました。今以上の力強いスイングができないならば,小林の限界なので仕方がないですが,当てることを優先しすぎてスイングスピードを殺してしまっているならば,その打撃は改めた方が良いのではないかと思います。

 以上のとおり,小林と大城では,運の要素を除いても大城の方が打撃能力が高いと思われます。私は,捕手は,守備力レベルがよっぽど低くなければ,守備力に目を瞑ってでも打撃能力の高い方を起用した方がチームは結果的に勝てると思っています。このまま二人の打撃に差があるならば,大城を優先的に起用して,小林は第三の捕手,もしくは,二軍に置いて一軍捕手がケガをしたときのリザーブという位置づけが相応しいのではないかと思います。